淫讐のじかん(猫肉しゃけ)

学生時代、彼は深い傷を負った。無慈悲ないじめの中で心が壊れ、未来を信じることすらできなくなっていた。それでも唯一の救いだったのが、孤独の中で描き続けたイラスト。やがてその絵がSNSを通じて注目を集め、気づけば彼は人気クリエイターとして名を知られる存在になっていた。容姿も洗練され、かつての自分とは別人のような日々。けれど、心の奥底にはいまだ“あの頃”の影が潜んでいた。そんなある日、フォロワーのひとりから「会ってみたい」とDMが届く。軽い気持ちで受けたその誘い。送られてきたマスク姿の写真に、なぜか胸の奥がざわつく――どこかで見たことのある気がしたのだ。そして、再会の瞬間。目の前に現れた女性の笑顔を見て、彼は言葉を失う。あの地獄の日々で、自分を追い詰めた“彼女”だった。過去と現在が交錯する一夜。忘れたはずの記憶が、静かに、そして鮮烈に蘇る――。